創業時の資金調達方法は多様化していますが、もっとも利用しやすいのは公的な創業融資です。代表的なものとしては、日本政策金融公庫と都道府県や市区町村が実施している「制度融資」があります。日本政策金融公庫は、政府100%出資の株式会社で、「政府系金融機関」と呼ばれています。創業者向けの「新創業融資」は、無担保無保証人で融資を受けることが可能です。一方「制度融資」は、自治体が窓口となって実施している融資です。自治体によっては、利息の一部を出してくれる制度があり、0.4%といった超低利での融資もあります。
創業期に資金調達する際には、まず創業融資を活用して、可能であれば他の調達方法も併用することをお勧めします。私が創業融資を勧めるのは、次の三つの理由があるからです。①創業前と創業直後がもっとも創業融資が受けやすい。②創業後はキャッシュが猛スピードで減っていくので、融資で余裕をもっておくのが妥当。③事業を続けるうちにまとまった資金を調達する必要が出てくるので、首尾よく融資を受けるためのノウハウを早く身につけておくべき。したがって、ある程度自己資金が潤沢にあったとしても、創業融資を利用する意義があるのです。他の調達方法との併用では、VCからのエクイティファイナンスで調達しようとしているベンチャー企業が、出資金が出るまでのつなぎ資金として創業融資を受けるケースが増えています。「創業補助金」を採択された企業が、補助金が出るまでに先に支払うために、創業融資を活用することもあります。また、公的な創業融資を利用すると信用が高まり、銀行や信用金庫など民間金融機関からの融資も受けやすくなる効果があります。
創業期の資金調達方法は選択肢が増えていますが、それぞれメリット・デメリットがあります。また、いずれも「審査」をパスすることが必要です。まずは、利用しやすい公的な創業融資を活用し、必要に応じて出資、補助金、クラウドファンディングなど、他の方法にもトライしてください。経営者にとって、資金調達のスキルは、事業を長く繁栄させるために欠かせないといっても過言ではありません。
文章「アントレnet」参照